第8話 唾液と免疫

21世紀は積極的な健康増進、より総合的な健康を目指す時代と考え『口腔機能と全身』をテーマにしました。
(一社)一般社団法人 十勝歯科医師会 口腔機能研究会

免疫力保つため清潔が必要

 私たちの体表面や消化器宮には、七百種類もの細菌が”同居”しています。これらの細菌は、外部から有害なばい菌が侵入するのを防ぎ、われわれの身を守ってくれる働きをしています。こうした細菌たちと共生することによってはじめて、健康な生活を送ることができるのです。

 口の中には、健康な人でも三百種以上の細菌が数千億個もすみついています。口の中の清掃を怠ると、爆発的に増殖して一兆個以上になると言われています。こうした菌が、老化や免疫力の低下などによって、さまざまな病気を引き起こすことがあります。
  口腔(こうくう)内の常在菌(常時すみついている細菌)によって引き起こされる疾患には、まず細菌性心内膜炎があげられます。歯周病原菌の一種、放線菌の中には、白血球の食菌・殺菌作用に抵抗して心臓弁膜に定着、心内膜炎を起こすものがあります。また、レンサ球菌のあるものは、しばしば細菌性心内膜炎を起こします。
  さらに歯周病にかかっている人は、そうでない人に比べて、心疾患による死亡者数が約二倍にもなるという報告もあります。

高齢者の死亡原因は多い順に、がん、心疾患、脳疾患、次いで肺炎です。肺炎を最も引き起こしやすい肺炎レンサ球菌は、七割のお年寄りの口の中から検出されています。

そのほか、歯周病原菌や緑膿菌、ブドウ球菌などの口腔常在菌も肺炎の原因菌となることが、かなり多いと予想されています。また、口腔内の慢性感染(歯根の先の炎症や歯周病)の病変細菌が糸球体基底膜に付くと、腎臓の基底膜細胞を痛め、糸球体腎炎を引き起こす危険性も指摘されています。
  口腔内の慢性感染症の細菌が関節腔(くう)に沈着すると、免疫反応で炎症が起こり、硬骨細胞が活性化されてリウマチ性関節炎が起きることもあるのです。
国立がんセンター研究所の佐々木博巳室長らは、歯周病菌の一種、アンギノサス菌(レンサ球菌のひとつ)は、食道がんなど上部消化器がんとの因果関係が濃厚であると報告しています。
  図に示す通り、口の中の細菌数は一日のうちでも大きく増減しています。起床時が最も多く、食事ごとに少なくなります。細菌の数は口を使わないときに多くなり、食事をすると、食片が歯面や歯肉をこすったり、口唇や舌、ほおが大きく動いたりして、だ液による物理的、化学的清掃がされるのです。
  口腔内の細菌が多すぎると、いろいろな病気を引き起こすことがあるので、口の中を清潔に保ち、免疫力を落とさないことが大切です。殺菌力があり、免疫物突を多く含むだ液をたっぷり出しながらの食事を心がけましょう。
  だ液をたくさん出すためには、ひと口三十回、しつかりかまなければなりません。

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