歯科Q&Aとイベントのご案内

第4話 むし歯の起こるメカニズム

むし歯の起こる成因は主に、細菌、砂糖、 歯の質と時間が関係しています。

1.細菌

歯の頭の部分(歯冠)を覆う人体でもっともかたい硬組織で、モース硬度計では6-7度に相当します。エナメル質が形成された後は、生きた細胞が無くなるため、一度失うと2度と再生しない組織です。

象牙質

むし歯は、 細菌の作る酸で歯の表面が溶かされて起こります。 この酸を作る細菌は、 歯垢(しこう) として歯の表面に付着しています。 歯垢は食べかすと思っている人もいるかもしれませんが,実際はその8割が細菌、 残りの2割が細菌の作り出す代謝物です。この中には500種類以上の微生物が存在するとも言われ、 その密度は1ミリグラム (粟粒大の量) あたり2億5千万匹もの菌が存在します。
それでは、砂糖から酸を作る菌はどれでしょうか。 実は口の中に住むほとんどの菌は砂糖から酸を作ります。 仕上げみがきをしてあげない汚れた状態では、 口の中で砂糖を材料にどんどん酸が作られてしまいます。 酸を作るむし歯菌は、口の中の細菌全体なのです。
それでも、 むし歯菌という名前を聞いたことがあると思います。 この菌がなぜ注目されているかといいますと、 それはこの細菌の作り出すものがむし歯の進行に非常に重要に係わっているからです。 現在もっとも注目されているむし歯の原因菌は、 ミュータンス連鎖球菌 (以下、ミュータンス菌) です。

2.砂糖

歯に付いた細菌は、 砂糖などを摂取して代謝産物 (食べたあとの“ウンチ”のようなもの) である酸を産生します。 甘いもの, つまり糖質を歯垢に作用させると、 脱灰力の強い乳酸を産生するので歯垢のpHは下がり, 歯が溶かされます。
おやつとして、 砂糖が長い間口の中にとどまっているものは、むし歯に要注意です。 お菓子 (特にアメやチョコ、スナック菓子) は、口の中にとどまっている時間が長くなり, 歯の健康にとって大変に危険なおやつとなります。 物心がつく前から甘い物を与え続けると、 子どもは砂糖がないと我慢できない状態になり、 むし歯や肥満・糖尿病を発症しやすい生活へと習慣が定着してしまいます。 砂糖は、 食生活の楽しさにも重要ですので、メリハリをつけて与える心がけが大切です。 また、代用糖を使用したお菓子の適度な利用も効果があります。

3.歯の質

歯の表面はエナメル質という非常に硬い素材でできています。 その成分はアパタイトと呼ばれ、カルシウム・リン酸・水酸基を主体とする結晶ですが、低いpH (酸性) には弱く、pH5.5 (臨界pH) 以下で溶け始めます。
フッ化物は、歯の酸に対する抵抗性を持たせることが知られています。 これは、フッ化物中のフッ素が歯の表面に沈着して、酸に対して抵抗性の結晶に変化するなどの作用があるからです。 さらに、むし歯になりかかった白斑の状態も、フッ化物の再石灰化促進作用でもとの健康な歯に戻す作用があります。フッ化物の取り込み方には、歯科医院においてのフッ素塗布、自宅でのフッ素洗口、フッ化物配合の歯磨剤の使用などがあげられます。

4.時間

歯垢中の細菌が産生した酸は、エナメル質の主成分であるアパタイトを溶解 (脱灰) します。 しかしながら、口の中に砂糖がなくなると、細菌は酸の産生をやめます。 すると唾液に酸が中和され (緩衝), 歯垢pHは再び中性に戻ります。 中性環境になると、歯垢中あるいは唾液中に多くとけ込んだリン酸とカルシウムは、脱灰を受けた歯質にもどり歯が修復 (再石灰化) されます。

むし歯のメカニズムからむし歯を予防する方法

むし歯は, 脱灰と再石灰化を繰り返し、脱灰の割合が大きくなっておこる疾患です。 虫歯の起こる成因として、(1)細菌、(2)砂糖、(3)歯の質、(4)時間を説明してきましたが、細菌に対しては、「歯みがき」 で細菌除去、砂糖に関しては 「食生活の改善」、歯の質に関しては、「フッ化物の応用」 で、それぞれのむし歯の発生因子を抑えることによってむし歯予防を行います。唾液分泌の量は, 食事前には少なく、食事をすると増加します。 これによって、食物の糖分が希釈され、歯垢中で細菌が産生した酸を中和して、さらに、再石灰化のためのカルシウムイオンの供給源にもなります。 よって、唾液はむし歯の起こる成因に関与していますので、むし歯予防に大変重要な役目を持っています。

PAGE TOP