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第2話 ぼけと咀嚼

21世紀は積極的な健康増進、より総合的な健康を目指す時代と考え『口腔機能と全身』をテーマにしました。
(一社)一般社団法人 十勝歯科医師会 口腔機能研究会

入れ歯の良否も影響

超高齢化社会に向かっている現在、だれもが願う事はいつまでも元気で自立した人生を送る事です。そこで、今回は『ぼけと咀嚼(そしゃく)』をテーマにお話します。
年齢が進み、歯の喪失数が増えると、感覚センサーとしての歯根膜(歯の根のまわり)の面積が減少します。

さらによくかめなくなることで脳血流量が減ってアルツハイマーや脳血管性痴呆症の原因となることが名古屋大学の上田実教授らの研究で分かってきました。自分の歯が少なくなるほど脳萎(い)縮が進み、脳内のすき間が最大で15%くらいまで大きくなることさえあるのです。自分の歯でバリバリかむ事が理想ですが、七十歳を過ぎて全部自分の歯の人は多くありません。しかし、歯が失われた場合でも入れ歯を入れると脳の活力の衰えは少ないのです。北海道医療大学の平井博敏教授らの調査では、義歯適合の良否が自立度に大きく影響することが分かっています。

帯広市に住むある在宅療養者が急性疾病で入院しました。退院後、以前とは違って無気力で食欲もなく寝たきりの日々が続きました。

対症療法を試みましたが改善がみられず、口の中が荒れているので訪問歯科診療を希望し、入れ歯を治してもらいました。すると劇的に全身症状が改善しました。このケースを目の当たりにした道総合在宅ケア事業団帯広訪問看護ステーション所長高橋多美子さんは「入れ歯を治したくらいで即座に改善するなんて、認識を新たにしました」と話している。通常、年齢とともに唾液の量は少なくなります。唾液には体に大変良い働きがあり、食物をよくかむことは唾液の分泌を促進させます。唾液量が多ければ、おいしさが増し、さらに顎下腺からはNGF(神経成長因子)、EGF(上皮成長因子)などのホルモンが分泌し、脳の神経細胞、線維の増殖や成長を促します。

脳を老化させない為には、自分の歯を出来るだけ長持ちさせることが必要で、失った場合は入れ歯などを早く入れることです。合わなくなった時にはすぐに治さなければなりません。しっかり食べられる状態を作り、よくかんで、ゆったりと会話を楽しみ、おいしく食事することがぼけない第一歩なのです。

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