第11話 咬合(咬み合わせ)

歯科における咬合とは三次元的な動きを踏まえた、とても難しい領域の医療です。
歯を健康に保つ2つの要素はプラーク(細菌)と力です。力とはこの咬合(咬み合わせ)が重要な役割を果たしています。
この咬合の不調和が生じると歯、歯の周りの組織の破壊を来たすことがあります。咬み合わせに関与する筋肉へのストレスが、正常な咬み合わせを阻害したり、頭痛の原因、顎や顔の変形、精神的な障害、耳鼻科領域の疾患につながることもあります。また、体全体的なバランス問題にまで波及して正常に歩けなくなることさえあります。また生じてしまった異常は、一生元に戻らなくなる恐れもあるのです。

この咬合の不調和は自覚症状が無いまま進行していることが多く、正確な検査診断を受けることが大切です。症状が出た時にはすでに遅く治療が困難になったり、治らない状態に陥ることもあります。

咬合の不調和の原因は?

歯周病、う蝕(ムシ歯)、乳歯から永久歯への生え変わりの異常、指しゃぶりなどの悪習慣、骨格的異常など、また、咬み合わせを無視した歯科治療においても引き起こされます。

歯科医院で一本の歯を治すにも必ず、咬合の検査、診断を受けた上で治療を受けることが大切です。痛みのある歯だけの治療に終止してしまうと、咬み合わせはその度ごとにズレを生じ、二度ともとに戻らなくなってしまうのです。

咬合不調和に対する治療について

咬合の検査診断は数多くの方法があります。ひとりひとりの咬合の基準を正確に見つけることさえも難しいのですが、次の2つの検査診断はとても重要です。

  1. 現在習慣的に咬んでいる位置と本来生体的に最も調和の取れた位置の差(CO→CRの差と専門的には言います)の診断
  2. 咀嚼筋群の触診の圧痛点を診ることによってどの筋肉が咬合の不調和により症状を呈しているかがわかります。

その他数多くの咬合検査分析による診断があります。

さて、咬合治療の一例を挙げてみます。
検査、診断に基づき、顎の位置が(左右の咀嚼関連筋群の生理的緊張の)バランスが取れた状態になるように歯の咬み合わせを調整します。歯の咬合による調整範囲以上の調整が必要とされる時は、歯への部分的あるいは全体的な補綴(被せ物)が治療方針に選択される場合もあります。この調整は三次元的運動への対応であり、偏心位(顎を前後側方に動かす時)への対応は更に複雑になります。
また、咬合調整の基準である咬み合わせの位置が正確に取れない時はスプリント療法と言い、咀嚼関連の筋肉のリラクゼーションを行い、咬合の位置そして方向を検査、診断することが必要になります。状態によっては広範囲の補綴処置、あるいは歯科矯正の適応とされる場合もあります。この咬み合わせの安定を計るためには、最低3ヶ月以上かかるものです。重症であれば更に長期の治療が必要になります。

日本における咬合の治療の現状

このように咬合の不調和は人生を左右する程の症状を呈することもある恐いものです。しかし、咬合を正しく理解して治療を行うためには、専門家たる歯科医師であっても相当な知識と経験が必要です。そのため、正確な検査、診断、治療が行われている医療機関がまだまだ少ないのが現状です。
今後、この分野の医療もスタンダードなものとして変えて行かなくてはなりません。しかし日本ではまだ相当時間がかかりそうです。

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