第11話 よくかむのが消化吸収の基本

21世紀は積極的な健康増進、より総合的な健康を目指す時代と考え『口腔機能と全身』をテーマにしました。
(一社)一般社団法人 十勝歯科医師会 口腔機能研究会

料理などで消化器系臓器活発に

食物をよくかんで食べることは全身の健康にとても重要です。上下の歯牙(しが)で食物を細かく粉砕し、だ液に含まれる消化酵素でさらに分解して消化を助けていることはだれでもが知っていることです。ですからこのシリーズ終盤で初めて取り上げました。

食物が栄養として体内に取り込まれるには、ただ細かくしただけではいけません。糖質はブドウ糖や果糖などの単糖類、たんばく質はアミノ酸やペプチド(数個のアミノ酸が合体したもの)、脂質は脂肪酸やグリセロールなどに分解されて初めて腸から吸収できるのです。このように分解するためには胃酸や胆汁などの消化液やアミラーゼ、ペプシン、トリプシン、リパーゼなどの消化酵素の作用が不可欠です。さらに食物とよく混ぜ合わせたり、消化管の下方に送るためにぜん動運動が行われます。
このような液の分泌やぜん動運動は、食物が胃の中に入るとすくに十分行われるわけではありません。人間の内臓などは自律神経によって支配されています。自律神経には交感神経と副交感神経とがあり、どちらか一方が優位に働くと別の一方は抑制される仕組みになっています。主として交感神経は攻撃するときや敵から逃げるときに優位になり、心臓の働きなどを活発にします。副交感神経は休息時や食事のときに優位になり消化器系などの働きを活発にします。

ですから食事前後の激しいスポーツや労働は消化吸収には最も悪いことなのです。

副交感神経を活性化し消化器系の臓器を活発に働かせるためには、料理を作る音を聞き、料理を目で見、香りをかぐこと大切です。これらの刺激は脳の摂食中枢に働き、食欲が起こると同時に、消化器に消化吸収の準備を始めさせます。

さらに、食事が始まると、歯牙やほお、舌への刺激、味覚が、神経を通して消化液の分泌やぜん動運動を促進します。ゆっくり食事をすると、食べ物が胃に達する前に、胃酸の四五%、すい液の二〇%が分泌されると言われています。おかゆをかまずに短時間で流し込むのと、ご飯をゆっくりかんで食べるのを比べると、ごはんをゆっくりとかんだ方が胃の中にとどまっている時間はほぼ半分になりま
す。消化吸収を効果的にするためには、短時間に、かまずにのみ込むことを避けなければなりません。
忙しい現代、ゆっくりと食事時間が取れないときには食前食後に無糖のガムをかむことも消化吸収には効果的かもしれません。

(一般社団法人 十勝歯科医師会口腔機能研究会)

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